CFパネル工法
CFパネル工法は、CFパネル①を既設コンクリート構造物表面②にアンカーボルト③で固定し、その背面の隙間に充填材④(エポキシ樹脂またはセメント系無収縮グラウト材)を注入して両者を接着・一体化することで、既設コンクリート構造物からの「コンクリート片のはく落防止」や「曲げ耐力の向上」あるいは「鉄筋コンクリート柱の耐震性向上」などを実現する工法です(図-1参照)。CFパネル背面への充填材注入に先立って、本体パネル取り付け後に接合パネルを接着します。
図-1 CFパネル工法の概要
CFパネル とは
CFパネルは、エポキシ樹脂を含浸した連続炭素繊維シート(以下、炭素繊維シート)を二枚のフレキシブルボード(厚さ3mm)で挟み込んで一体成形した炭素繊維シート複合パネルです。これらの材料の品質は表-1に示すとおりです。
CFパネルには、一方向あるいは二方向に接合部を有する本体パネルのほかに、本体パネル同士を接合するために用いる接合パネルの二種類があります。本体パネルには片面のフレキシブルボードの端部のみを額縁状に配置して中央部に開口を設けて付着性能を高めたパネル(高性能パネル、写真-2参照)があります。
基本形状
本体パネルは、幅1m×長さ2mの平板タイプが標準で(標準パネルと呼称)、その他にトンネル覆工コンクリートの曲率に応じてR加工(最小曲率半径1.6m程度)した曲面形や、コンクリート構造物の形状や施工条件に合わせて断面形状をL形やコの字形などに加工することもできます。 パネル端部には隣接するパネルと接合するため幅110mmの接合部(一方向と二方向の二パターン)があります(図-2参照)。
図-2 本体パネル(標準パネル)の形状寸法と断面図
CFパネル構成材料の種類と品質
表-1 CFパネル構成材料の種類と品質
材料の種類 | 材料の品質 | ||||
---|---|---|---|---|---|
炭素繊維シート | PAN系 高強度品 |
炭素繊維シート配向 | 炭素繊維シート 目付量(g/m2) |
引張強度 (N/mm2) |
引張ヤング係数 (N/mm2) |
一方向 | 200,300,400,600 | 3,400 | 2.45×105 | ||
二方向 | 400 (200×200) | ||||
二方向 | 200 (100×100) 300 (150×150) |
2,900 | |||
フレキシブルボード (繊維強化セメント板) |
厚さ (mm) |
曲げ強度 (N/mm2) |
含水率 (%) |
吸水率 (%) |
見かけ密度 (g/cm3) |
3.0±0.3 4.0±0.3 |
25以上 | 10以下 | 28以下 | 1.50±0.15 | |
エポキシ樹脂 | 含浸用 | 比重(主剤) | 粘度(主剤) (mPa・s) |
引張強度 (N/mm2) |
引張せん断強度 (N/mm2) |
1.16±0.02 | 1,850±350 | 40以上 | 10以上 |
CFパネルの施工方法の特長
CFパネルの用途と種類
CFパネルには、炭素繊維シート目付量400g/m2以下の汎用品である「標準パネル」に加え、鉄筋コンクリート柱の耐震性向上を目的とした炭素繊維シート量の多い「耐震補強用パネル」、内蔵した炭素繊維シートを直接鉄筋コンクリート構造物に接着させるパネル構造とすることで付着性能を向上させた「高性能パネル」および標準パネル表面に特殊な樹脂を塗装した「耐摩耗性樹脂塗装パネル」などがあります。
既設コンクリート構造物のコンクリート片のはく落防止、耐荷性能や耐震性能の向上、各種劣化対策およびリニューアル工事など、使用目的に応じて最適な製品を選択できます。(表-2参照)
表―2 CFパネルの用途と使用パネルの種類
CFパネルの用途 | CFパネルの種類 | 炭素繊維シート 目付量(g/m2) |
充填材の種類 | 引張強度の 設計用特性値 (N/mm2) |
---|---|---|---|---|
①トンネル覆工コンクリートのはく落防止 ②コンクリート部材の曲げ耐力向上 |
標準パネル1) (写真-1) |
200~400 | エポキシ樹脂 セメント系無収縮 グラウト材 |
2,500 |
②コンクリート部材の曲げ耐力向上 | 高性能パネル1) (写真-2) |
200~300 | エポキシ樹脂 セメント系無収縮 グラウト材(高付着) |
3,000 |
③鉄筋コンクリート柱の耐震性能向上 | 耐震補強用パネル1) (写真-3) |
400~1,800 | セメント系無収縮 グラウト材 |
2,500~3,4002) |
④コンクリート水路の耐摩耗性能向上 | 耐摩耗性 樹脂塗装パネル (写真-4) |
200~400 | セメント系無収縮 グラウト材 |
2,500 |
注1)オプションで、パネル表面の撥水処理や意匠性向上・落書き防止を目的とした無機系高耐久塗料を塗装することができます
注2)炭素繊維シートの目付量によって、引張強度の設計用特性値は変化します
CFパネルの基本性能
表-3 CFパネルの基本性能
性能 | 試験方法および試験条件 | 試験結果 | 備考 |
---|---|---|---|
接着性 | JSCE-K531「表面被覆材の接着強さ試験方法」に準拠 ・炭素繊維シート目付量:200g/m2 ・充填材:セメント系無収縮充填材 ・常温養生:材令7日 |
付着強さ 2.01N/mm2 |
|
・炭素繊維シート目付量:200g/m2 ・充填材:エポキシ樹脂 ・温冷繰り返しおよびアルカリ促進養生 【1サイクル:-30℃×3h,+60℃×3h(水酸化カルシウム飽和水溶液半水浸),+23℃・50%RH×18h(水酸化カルシウム飽和水溶液半水浸)】を30サイクル繰り返し ・押し抜き荷重試験は、東日本旅客鉄道株式会社標準仕様書 「コンクリート表面被覆工法の試験方法」に準拠 |
付着強さ 2.06N/mm2 ≧0.7N/mm2 |
写真-5 | |
押し抜き性能 | 最大荷重 8.74kN≧1.5kN |
||
NEXCO試験方法734「トンネルはく落防止用繊維シート接着工の押し抜き試験方法」に準拠 ・炭素繊維シート目付量:200g/m2 ・充填材:セメント系無収縮充填材 |
最大荷重 8.04kN>1.1kN |
写真-6 図-3 |
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延焼性 | NEXCO試験方法738「トンネル補修材料の延焼性試験方法」に準拠 火炎温度:1200℃以上 10分間 ・炭素繊維シート目付量:200g/m2 ・充填材:セメント系無収縮充填材 |
・延焼時間:0秒、2秒 ・延焼方向: 左右方向;105、105mm 上下方向;93、104mm≦300mm |
写真-7 |
凍結融解抵抗性 | JIS A 1435「建築用外装材料の凍結融解試験方法」の水中凍結水中融解法に準拠 温度範囲:-20℃~10℃ ・炭素繊維シート目付量200g/m2 ・600サイクルまで、試験 ・外観変化・質量・厚さ・引張強度を測定 |
引張強度(N/mm2) 一般部 接合部 試験前 5189 4043 300サイクル 4396 4242 600サイクル 4169 3977 ・大きな変状無し |
写真-8 |
(荷重-変位図)
(600サイクル後のCFパネル外観)
CFパネル工法による補強後の構造性能
① RC部材の曲げ補強効果
写真-11 RC梁試験体の載荷実験
- 炭素繊維シートの高い剛性,引張強度により、RC部材の曲げ耐力が向上
- 「高性能パネル」を適用した場合、コンクリートとの接着性能向上により高い補強効果を発揮
図-6 CFパネル補強試験体の曲げ補強効果
② RC柱の耐震補強効果
炭素繊維シート巻立て工法と同等以上の靭性補強効果を発揮
■実験結果の一例 : 無補強との比較
CFパネル補強により、せん断破壊から曲げ破壊に移行
図-7 CFパネル補強RC柱の靭性補強効果
写真-12 実大RC柱試験体の正負交番載荷実験
■CFパネル工法による補強後の靭性率
シート巻立て対象の土木学会指針式*で評価可能
図-8 CFパネル補強RC柱の靭性率
*土木学会:FRP接着による構造物の補修補強指針(案)、2018.